インスタントフィルムの文化を継承し続けるプロジェクトのギャラリー「Impossible Project Space」で写真の魅力を新発見。 2013.9.6
インスタントフィルムをテーマにした展示をしているギャラリーがあるということは知っていたのですが、行ったことのなかった中目黒新聞。
予習もほどほどに実際うかがってきました。
中目黒駅から歩いて5分ほど、山手通りから宿山橋を渡り目黒川を越えたところに「Impossble Project Space」はあります。
このコンクリート打ちっぱなしのクールな建物の2階。
階段にはインスタントフィルムを10枚使ったサインが出迎えてくれます。
2Fに上がり、ガラスの扉を開けると受付のカウンターがあり、
スタッフのなっちゃんが出迎えてくれました。
なっちゃん
こんにちは。
中目黒新聞
こんにちは。
あの、こちらはギャラリーなんですよね?
なっちゃん
はい、ギャラリー兼ショップでもあります。
中目黒新聞
(ショップ?)
とりあえずギャラリーを見せていただいてよろしいですか?
なっちゃん
はい、こちらにどうぞ。
と招き入れていただいた入口左側のスペースは、白とコンクリートの壁、キレイなフローリングの床、白い天井には印象的な照明、と流石かっこいいスペースが広がっています。
道路に面した側は一面ガラス張りで開放感のあるステキな空間です。
この時は「退比展」という展示を開催中で、スペースの中央にはすごい迫力の花のオブジェが飾ってあり、壁面にはインスタントフィルムの作品が額に入れられたり、大きく引き伸ばされたりして飾られています。
「退比展」はフィルムと湿度の関係性に迫るということで、日々風化してゆく花の様と、フィルムが退化してゆく様を掛け合わせ、日々の経過記録をアートに落とし込んだインスタレーション。
アートです。
「Impossible Project Space」では、インスタントフィルムをテーマにした展示を中心に、年中様々な趣向の展示を展開。
また、豊富にある写真集をじっくり読んでいただけるリラクゼーションスペースとしても活用してほしいとのことですので、気軽に遊びに行けますね。
しばらく作品を観賞させていただき、すっかりアートを堪能した贅沢な気分になったところで、先程「?」だったショップも見せていただくことに。
するとそこには・・・
見覚えのあるかわいいインスタントカメラや、
ヴィンテージ感たっぷりのカメラや関連グッズがズラリ。
また、写真集やウエアなども取り扱っています。
こちらで販売されているクラシックなインスタントカメラ、やはり、数年前に生産終了した、あの、
Polaroid社のインスタントカメラ
じゃないですか!
例えばコチラ。
1971年に発表された歴史的名機。
「SX-70 FIRST MODEL」
もちろん所謂中古なのですが、整備が施されちゃんと動作するものが販売されています。
中にはシャッターボタンの色がカスタマイズされているものや、IMPOSSIBLEとアーティストによるコラボレーションでレザー部分がカスタムされたモデルなど、同じ機種でもいろいろなバリエーションがあるので、見ているだけでもワクワクしてきます。
こちらはFIRST MODEL登場から数年後に発売された「SX-70 SONAR ONESTEP」
レンズ上部の蜂の巣状の円形の部分から超音波を発し、跳ね返ってきた超音波を感知し自動でピントを合わせてくれる、ソナー機能付き。
「ソナー」って響きがヤバいです!
こちらはSX-70から受け継がれてきた可変型カメラの最終モデル「690SLR」とその前に発売された「SLR680」です。
ソナーに加えてストロボまで搭載し、高感度フィルムを使用することで従来のものとは異なる美しい写真が撮れるという高機能モデルということで、プロにも評判となったモデルだそうです。
これら以外にも各世代のいろいろなモデルのポラロイドカメラがあります。
しかも同じモデルでもカラーやパーツ、コンディション等、同じ物は二つとない一点物ばかり。
理想のカメラに出会うには時々チェックしなきゃですね。
中目黒新聞
ところでなっちゃん、教えてほしいんですけど、
そもそも「IMPOSSBLE」って何なんですか?
なっちゃん
ウフフ、「Impossible Project」、それは、
不可能な計画ですっ。
中目黒新聞
なるほど、っておい~、それじゃ理解不可能ですよ~
なっちゃん
ごめんなさい、ちゃんとご説明しますね。
と、ここでなっちゃんのボス、アキさんが登場(残念ながら写真NGの美人さん)
中目黒新聞
ところでインスタントフィルムもポラロイド社は生産するのを止めちゃったんですよね?
アキさん
そうなんです。
そこで、根強い人気を誇るポラロイド社のインスタントカメラの文化を絶やさず時代へ繋げていくために2008年に立ち上げられたのが「Impossible Project」なのです。
具体的にはポラロイド社のインスタントカメラで使用できるインスタントフィルム「IMPOSSIBLE FILM」を開発・販売するというプロジェクトです。
中目黒新聞
ほ~、それでインスタントフィルムの開発は今どうなっているんですか?
アキさん
はい、オランダにある元ポラロイド社の工場、設備を利用し、2010年3月に「PX100シルバーシェイド」「PX600 シルバーシェイド」の2種類のフィルムを、7月には「PX70 カラーシェイド」を発表しました。
その後も高感度のタイプや、アーティストとコラボレーションしたものなども発売しています。
中目黒新聞
へ~、ではもうプロジェクトの目的はある程度達成されたんですね。
そんなにインポッシブルじゃなかったような気がしますけど・・・
アキさん
いえいえ、まだ挑戦は続いているんです。
もっと私たちの取り組みを広く知っていただきたいですし、「IMPOSSBLE FILM」の性質を知っていただき楽しんでいただきたいと思っています。
実は「IMPOSSBLE FILM」はかつてポラロイド社が生産していたインスタントフィルムとは全く違うものなのです。
中目黒新聞
えっ? そうなんですか?
アキさん
当時の薬品材料が存在していないため、新しい材料、新しい作り方でまったく異なるフィルムを作っているのです。
そんな事情もあり、「IMPOSSIBLE FILM」は温度や湿度にとてもデリケートな性質でして、シャッターボタンを押した直後に排出され現像が始まるのですが、その際外光に当たると感光し赤みを帯びた仕上がりになりやすいのです。
中目黒新聞
そうなんですね。
でも展示されている作品なんかを見ると独特の味わいがあってとてもステキですけど。
アキさん
光や温度、湿度への対策をすることで仕上がりをある程度コントロールできるんです。
ポラロイド時代にはない工程なのですが、そのプロセス自体も新しい楽しみ方としてとらえていただけると嬉しいです。
中目黒新聞
具体的にはどんなことをするのですか?
アキさん
ひとつは「遮光」です。
フィルム排出直後がもっとも大事なタイミングなので、IMPOSSIBLEが専用にご用意したアイテム「IMPOSSIBLE PX SHADE」や、ダークスライドをつかった小技などで遮光します。
もうひとつは「乾燥」です。
IMPOSSIBLEの専用アイテム「DRY AGE KIT」や、ジップロックと乾燥剤を利用し、撮影後に1週間から10日間前後保管することで、その時点での状態を保つことができます。
中目黒新聞
なかなか手間かかるな~って感じますね・・・
アキさん
そうですね。
でも、一度体験していただければ、プロセス自体も楽しんでいただけると思いますし、何よりそういったプロセスを経て仕上がる「作品」への愛着を感じることができることを独特の魅力と感じていただきたいと思っています。
中目黒新聞
なるほど。
とても興味が沸いてきましたよ~
確かウチにポラロイドカメラあったような気がするのでちょっと探してみます!
後日、自宅の押し入れを大捜索し発掘した結果出てきましたよ。
BOX型の「LAND CAMERA 1000」を発見!
機能的には明暗コントロールのダイヤルがあるだけのシンプルなものですが、かわいいデザインが◎。
再び「Impossble Project Space」を訪問し、「PX70 COLOR PROTECTION」フィルムと遮光のためのアイテム「The Impossible Frog Tongue」、乾燥のためのアイテム「IMPOSSBLE DRY AGE KIT」を購入。
それぞれのアイテムの使い方や撮影の際のコツなどを詳しくアキさんがレクチャーしてくれたので、早速その足で、夕方の中目黒の風景を撮影してみました。
まずはフィルムのセッティング。
すごく厳重に密封されているPX70フィルムを開封。
フィルム本体はこんなかんじ。
フィルムを格納する部分を明け、挿入します。
そして蓋を閉じると、
ガチャ、ウィーーーーン
とメカニカルなサウンドと共にダークスライドというフィルムを光から守っているカバーのようなものが排出されます。
この次からシャッターを切るとフィルムに撮影されます。
左が撮影直後のフィルム、まだ真っ青な状態ですが、だんだんと像が浮かび上がってきます。
右がダークスライド。
フィルムが出てきた状態はこんなかんじ。
「The Impossible Frog Tongue」を装着しているので、しっかりフィルムを外光からカバーしてくれています。
音もそうですが、フィルムが排出される時の手に伝わる振動がアナログ感たっぷりで楽しいです。
シャッターボタンの微妙な配置や、本体の軽さなどから、かなりしっかりホールドしないとブレやすいと感じました。
フィルムの枚数には限りがあるし、気合いホールドも必要で、1枚1枚撮る時に感じるちょっとした緊張感が新鮮です。
更に、フィルムは光が当たらないように「DRY AGE KIT」(なければフィルムの空き箱など)に慎重かつすばやく収納。
カラーフィルムの場合、30〜40分間ほどで現像できるので、その間遮光しておくと色飛びなどを最小限に抑えられるそうです。
あとは数日間、乾燥させればしっかり定着するとのこと。
さて、その時に撮った写真をご紹介。
こちらのヒマワリの写真は白黒フィルム「PX100 Silver Shade」を使用。
ん~、個人的には思い入れがあるので満足ですが、まだまだ腕を上げたい気持ちになります。
フレームや額に入れて飾ったり、スクラップブックでアルバムを作ったり、友人にプレゼントしたり、楽しみが膨らみますね。
実際撮影までしてみて、少し手間はかかるけどステキな写真に仕上がることを期待しながら完成を待つのはなかなか楽しいと感じました。
そんな新しい写真との付き合い方に、
ハマりそうです。
休日にはポラロイドカメラとIMPOSSIBLE FILMを持ち、ステキなシーンを探しながらナカメを散歩するなんていかがでしょうか?
【新製品情報】
THE INSTANT LAB
現在先行発売中のIMPOSSIBLE新製品がギャラリーに展示してありました。
「THE INSTANT LAB」は、iPhoneで撮影した写真がインスタント写真に生まれ変わるユニークなカメラ。
ILL KICK JAPAN UT from Impossible Project on Vimeo.
今秋には正式発売予定とのことで、こちらも楽しみです。
Impossible Project Space
所在地:東京都目黒区青葉台1-20-5 OAK BLD 2F
TEL:03-5459-5093
HP:http://www.the-impossible-project.jp
NEWS:http://impossible-tokyo.tumblr.com/
Facebook:https://www.facebook.com/pages/Impossible-Tokyo-KK/151195978278650
Twitter:https://twitter.com/impossibletokio
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